2010/10/24 2007・プジョー307
第16回 (3年 51,000km)
![]() | 新潟市中央区にて。紅葉の兆しがちらほらと。 |
307を初めての車検に出しました。
この「My Car-Graphics」を始めて12年経ちますが、車検を通した話をちゃんと書くのは初めてですね。「見積とったけどやっぱ買い替えるわ」ってのは3回書きましたが(笑)。
今まで乗ってきた車は、車検はすべてディーラーに任せていましたが、前回書いたようにディーラーとは縁を切り、別の工場へ出しました。
おしながき 法定費用 重量税印紙代 30,000 自賠責 22,470 印紙代 1,800 車検時手続費用 9,000 法定費用合計 63,720 車検整備費用 整備内容 技術料 数量 部品単価 部品小計 24ヶ月車検整備基本料 36,800 - - - エンジンオイル・オイルフィルター交換 3,000 - - - エンジンオイル TOTAL7000 - 3.5 1,800 6,300 オイルフィルター - 1 1,600 1,600 オイルドレンプラグガスケット - 1 200 200 ブレーキオイル 1,800 0.5 2,000 1,000 バッテリー交換 * 3,679 1 29,000 29,000 左タイロットエンド交換 381750 8,100 1 6,200 6,200 ポーレンフィルター交換 647975 1,800 1 3,800 3,800 ショートパーツ (ケミカル類) - 1 1,000 1,000 発煙筒 - 1 750 750 技術料計 55,179 部品代計 49,850 車検整備費用合計 105,029 消費税 5,251 総合計 174,000 * 事情があり総合計を千円単位にする為に数十円上乗せしてもらいました。
コミコミ174,000円という値段は、このクラスの車(国産含む)をディーラーにおまかせ車検に出した場合の標準的な値段かと思います。段取りや手続もスムースに完了し、307は無事わが家へ帰ってきました。
今回はバッテリーを交換してます。今まで乗った車では4年以上使えていましたが、今年の猛暑でエアコンを多用したことと、旧来の車より電力消費が多そうなことを勘案し、早めの交換を行ないました。ブレーキパッドはあと1万キロはいけそう(サービス氏談)だったので見送りました。距離のわりに減りが少なかったそうです。MTですし、巡航型の使用パターンが多かったせいかと思います。パッドの寿命は予測できるのに対し、舶来物のバッテリーは突然死の噂が絶えないので後者を優先しました。
ではここからが本題、いつもの代車インプレッションです。
![]() | 今回の代車、フィアット プント ELX。 2001年式、8万キロ。 |
初の
イタリア車のイメージって正直よく分らないんですよ。「ラテンの熱い情熱」とか「とにかくエロい」(アルファ147乗りの知人談)とか云われてもさっぱりです(笑)。10年ぐらい前、プント(初代)とアルファ155を試乗したことがありますが、悪口ではなく文字通り「どこが良いのか分らない」状態でした。でも根強いファンがいるのも事実ですし、いつかはちゃんと乗ってみなきゃと思ってました。
写真のプントは2代目で、2000年から2006年まで輸入されていたモデルの前期型。
ヴィッツと同クラスの、普通のFWD小型車です。
まずはスペックをご紹介。
フィアット プント
ELX 16V
(2001年式)フォルクスワーゲン ルポ
コンフォートパッケージ
(2002年式)ボディ形式 5ドアHB 3ドアHB 全長(mm) 3,835 3,525 全幅(mm) 1,660 1,640 全高(mm) 1,480 1,475 ホイールベース(mm) 2,460 2,320 車両重量(kg) 1,060 1,000 総排気量(cc) 1,241 1,389 最大出力 80ps @ 5000rpm 75ps @ 5000rpm 最大トルク 11.6kgm @ 4000rpm 12.8kgm @ 3800rpm トランスミッション CVT 4速AT タイヤ 185/60R14 185/55R14 価格(円) 1,595,000 1,590,000
以前乗っていたVWルポと比較すると、ドア2枚ぶん長い感じでしょうか。
メカニズムの特徴はスバル製のCVTを積んでいることです。
![]() | この写真だと大きく見えますが、5ナンバー枠に余裕で収まるディメンジョンです。 |
走り出すと、んまー、あちこちからいろんな音がします(笑)。エンジンはぶんぶんと賑やかだし、内装のどこかがキコキコ鳴ってます。307と比べるとロードノイズも大きいです。クラスが違うのでしょうがないんですけど。動力性能は、ヴィッツの1リッターでも不満のない私には十分。CVTはスムーズで違和感なし。スペックを知るまで「独特のフィーリングのトルコンAT」だと思ってたぐらいです。
![]() | 運転席まわりのスペースはVWルポと同じぐらいです。プラスチック部品の安っぽさは想像通り。シートバックをめいっぱい起こしてもステアリングは遠く、かつ右にオフセットしてます。 |
このCVT、減速比を刻々と変えつつ1400rpmあたりをキープしようとします。60km/hでもそのぐらい。トルコンATにはできない芸当です。いかにも燃費が良さそうですが、この回転域だと室内にものすごく低音がこもります。「むーん」というか「ずーん」という低い音が共鳴するんですよ。だんだん耳が疲れてきます。昔のライトバンってこうでした。MTやトルコンATと違って、スピードを上げ下げしてもこの回転域から逃れられないのが辛いところです(笑)。街中での挙動はわりとスムーズで、輸入小型車っぽいギクシャクした乗りにくさはないです。
![]() | 6速マニュアルモード付きCVT。建て付けはしっかりしており、操作性もいいです。シートの生地も独特ですね。 |
足回りは、細かな突起はよく拾うものの、ストロークが深くて昨今のプジョーよりよっぽどしなやかです。薄いシートは骨格に合ったカーブで背中をまんべんなく支えます。硬さと大きさは普通です。ブレーキはよく踏まないと効きが悪いですが、よく踏めば人並みに効きます。
あと、307に比べると後方視界が良いのと、ボディの四隅が掴みやすいのが好印象です。
![]() | 素直なデザインのメーター。レッドゾーン表示がないのはCVTだから? スピードは200km/hスケール。 |
![]() | こういう単純なダイヤルが一番使いやすいです。エアコンはマニュアルで、中央のダイヤルを押し込むとON。 |
![]() | 後席スペースは今どきのリッターカーの標準サイズ。 |
![]() | 外寸から想像するより大容量。このあたりも欧州車らしいところです。 |
![]() | 左のミラーはめいっぱい開いてもこの程度。映る景色の半分は自車です。私は直接目視することが多いのであまり気にしませんが。 |
![]() | デザインのポイントである薄型ライト。小型車なのに4灯式で、フォグまでここに同居してます。 |
![]() | 夜の眺め。平均燃費18.4km/Lの表示が見えるでしょうか。左側の緑ランプはターンシグナルで、左右どちらに曲がる時もこの表示。ちょっと不便です。 |
9年落ち8万キロのフィアットなんてどんなボロだろうと最初は思いましたが、意外にしっかりしてるので驚きました。塗装の耐久性もホンダやマツダの5年落ちモデルよりいいかな?
あと、このスタイルは人目を引きますね。対向車のドライバーがよく見てます。このキレ具合はさすがイタリアン。
見た目と街乗りの印象はこんなところでしょうか。家人いわく、あまり好きじゃないそうです(笑)。アクセルとブレーキのペダルが近すぎて踏み間違いそうになるのがよろしくないそうです。私はAT車のブレーキは左で踏むのでまったく気になりませんでしたが。
![]() | いちばん「イタリア」を感じさせるのが、この配色のセンスです。 |
さて、欧州車のフィーリングを確かめるには遠出は欠かせません。いつものごとく温泉まで行ってきました。すいている一般道を往復130km、60km/hぐらいで巡航。現地に着いてからはワインディングロードを常識的なスピードでかけずり回りました。
で、どうだったかと言うと…
すんごい楽しいです(笑)
「ラテンの明るいノリ」というのはハイになって馬鹿騒ぎするような楽しさではなく、爽快な気分というか、ポジティブな人を見て「ああ、ポジティブだなあ」と感じる時の気持ちに近いです。とにかくドライバーの意志に従順なんですよ。それも執事のような自分を押し殺した従順さではなく、よくしつけられた中型犬と遊んでいるような気分です。飼い主の一挙一動に従いつつ、しっぽをぶんぶん振ってじゃれてくるような。
ハンドリングはシャープです。307に比べると小さい半径のコーナリングが得意で、積極的に鼻を向けます。足回りはしなやかで、ストロークは適度に深く、四輪にうまくグリップが分散される感覚です。後ろ足がいい働きをするFWDは気持ちいいですね。バウンドは1回できれいに収まり、うねった所を通るのがだんだん楽しくなってきます。
エンジンはトルクフルで、1.2リッターという排気量を感じさせません。山道でもじゅうぶんな馬力です。トルクのおいしいところを一瞬たりとも外さないCVTは上りが楽ですね。トルコンATと違って絶対にキックダウンが起こらない安心感は格別です。下りはマニュアルシフトを駆使すれば思いのままのエンブレが効きます。シフターをDに戻してもシフトショックがなくするするっと無段階にレシオが変わっていくのもCVTの長所ですね。同じ±ポジション付きATでもトルコンとはその存在価値がぜんぜん違います。
![]() | 古い写真ですみません。いつもの試乗コース、国道459号線です。中速コーナーが連続し、車のフィーリングを確かめるのに格好の場所です。温泉も近いし(笑)。プントは写真のユーノスや温泉に勝るとも劣らないすがすがしさでした。 |
ちなみに前述のこもり音についてですが、シフターをよく見たら「E」というスイッチがあってONになってました。省燃費モードのようです。OFFにしたら巡航時の回転数が200rpmぐらい高まり、こもり音はウソのように解消しました。ONだと結果的にハイギアードになるのでエンブレがほとんど効かず、マニュアルシフトでは2つぐらい落とさないといけなかったのですが、OFFならトヨタの頭の良いATぐらいには効きますし、手動でのシフトダウンも1段階で済みます。
このCVT、巡航中は1500~1800rpmあたりをウロチョロしてて、踏めばぱっとレシオを下げて応答してくれます。まさに理想的なトランスミッションですね。アメリカ車は伝統的に、大排気量のエンジンをゆるゆる回して巡航することでこれに近い特性を得ていたんだなと気づきました。トルコンATだとアクセルを踏み込むと「ロックアップ解除→トルコンが目覚める」というプロセスがあるので、このスムーズなフィーリングは得難いですね。
CVTは会社の車(日産ノート)でお馴染みなのですが、そちらはいかにも眠そうなフィーリングで、あくまでも「トルコンATのリプレース」という感じです。片やプントは、トルクフルなエンジン、気持ちいい足回りとあいまって、ドライビングの楽しみを駆り立ててくれる重要な役どころになっています。
乗ってみるまでは「イタリア小型車ならMT一択だろう」と思ってましたが、プント(の普通のグレード)にはこのトランスミッションしかありえないと思うに至りました。スバルGJ。このインプレッションを書くために130km走ってきた今日でも、またこの車でその場所へ走りに行きたいなーと思うぐらいです。
この日の燃費は21.2km/L。にわかには信じがたいですが、ユーザーレポートを読むとそれに近い数字が出てます。CVTおそるべし。素のモードでもこんなに良いなら、Eモードは要らないかな? 同じコースを同じように走ったら、307 (1.6MT)なら17~18km/L、ルポ (1.4AT)なら15km/Lぐらいでしょう。そう考えると、VWには高い技術があるはずなのに燃費が悪い、すなわち日本にマッチしてないセッティングのまま導入して燃費をずいぶんスポイルしていたんだなと思います。
プントは乗って半日ですっかり慣れました。この「慣れる」という体と気持ちの変化が、フランス車やドイツ車にはないと思いました。「仲良くなる」というか。フランス車は走り出してから体が本当に馴染むまでいつも1時間ぐらいかかります。「慣れる」はお互いに近づく感じ、「馴染む」はあくまでもドライバーである自分が中心でそれに相手が添ってくる感じでしょうか。いっぽうドイツ車は「俺は俺の考えでちゃんと走ってやるから、お前はしっかり操縦しろよな」と言われる気がします。あと日本車は、休日に乗っても、仕事の付き合いでゴルフに行くような「いつも頭の片隅に仕事が居座ってる」感覚がありますね。
私の数少ないインプレ経験から各国の車の印象をまとめると、こんな感じです。
- イタリア車 走らせてナンボ。
- フランス車 遠出してナンボ。
- ドイツ車 評価してナンボ。
- 日本車 使ってナンボ。
![]() | 新潟県阿賀町にて。 |
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